「本田圭佑氏を超えたい」アフリカ逆輸入リーガーへ "挑戦者" -森下仁道-

 

アフリカ、ザンビアのプロリーグで活躍した森下仁道氏による上記の記事から一年。その後の彼の活動、苦悩、そして彼の見据える未来に少しでも触れたいと思い、緊急でインタビューを敢行した。

 

ザンビアでのプレー後、アフリカ5か国(タンザニア、ケニア、ウガンダ、ルワンダ、ガーナ)でプロチームの練習に参加、帰国後には本田圭佑氏と面会、大学を卒業し先日にはYoutubeデビューも果たした、挑戦者、森下仁道に迫ります。

 

2020年3月筑波大学卒業した森下氏

 

アフリカで得た市民権"JINDO"どちらかと言えばキツかった

 

<筆者>
お久しぶりです、今日もよろしくお願いします。まず率直に聞きます。アフリカでの選手としての活動はいかがでしたか?

 

<森下氏>
楽しかったかどうかでいうと、楽しくなかった。キツかった。高いパフォーマンスを求められているけれど、それを維持できる環境がないんです。食事や練習環境、その他色々とコンディションを整えることが難しかった。

 

<筆者>
そのような厳しい環境の中で、どのように乗り越え、パフォーマンスを発揮していったのですか?

 

<森下氏>
これはアフリカのサッカーなのだ、と割り切りました。私が求めすぎていたのだと。そう思うようになってからは気持ちも楽になり、プレーに集中できるようになりました。

 

<筆者>
逆にアフリカサッカーの現場でプレーしていて、嬉しかったことなどありますか?

 

<森下氏>
日本人、JINDOとして地域に受け入れてもらった瞬間ですね。アフリカでプレーをし始めた当初は、地元の人に「チャイニーズ」「チンチョン(アジア人に向けた蔑称)」などとヤジがよく飛んできました。でもその後いいパフォーマンスを続けていると徐々に認められていくんです。いや、アイツは日本人のJINDOだ、と。その瞬間は嬉しかったです。それはアフリカでプレーしたからこそ得られた経験だと思います。確かにキツい毎日でしたが、一日一日を噛み締める充実感はありました。

 

 

アフリカに感じるポテンシャル。彼らは無理が効くんです。

<筆者>
次にベタといいますか、よく言われている「アフリカの人は身体能力が高い」という点についてお聞きしたいのですが。アフリカサッカーのポテンシャルはやはり感じましたか?

 

<森下氏>
そうですね、ポテンシャルはあると思います。具体的に話すと、彼らは身体の無理が効くんです。日本人なら怪我するであろう局面でもトライする。彼らはそれでも怪我をしないのか、怪我と思ってないのか(笑)とにかく身体の無理が効くんですよね。あのアフリカならではの環境でパフォーマンスを出せるという意味では、身体能力が高いと思います。

 

馬のように走れるのはもちろん、このようなグランドでもボール扱う技術すごいんです

 

<筆者>
そうなると、日本でもさらにアフリカの選手がプレーする機会は増えていきそうですね。

 

<森下氏>
たしかに日本でも活躍するアフリカ出身の選手は多くいます。ただ、身体能力の高い全てのアフリカ選手が日本でも上手くいくかは別だと思います。それは彼らの"異なる環境への適応能力"だったり、色んな弊害はあると思います。ただポテンシャルがあることは事実だと思います。

 

1日6度の嘔吐。帰国後の不安と焦りを救った"ストレスの既視感"

<筆者>
ザンビアでのプレー後はアフリカ5ヵ国でプロチームの練習に参加、そして帰国、大学に復学という流れだと思うのですが、帰国後の活動はいかがでしたか?

 

<森下氏>
アフリカから帰国した後は、大学に復学したのですが、進路に対する焦りと不安に溺れていました。留学での疲れも時間差で出始め、一日6回ほど吐く状態が2ヶ月弱続いてしまったんです。そんな中目標にしていた「アフリカ逆輸入Jリーガー」になる挑戦は、今シーズンは達成することができなくなりました。応援して下さった皆さまには申し訳ないと思っています。原因は明確です。実力不足です。

 

<筆者>
そんな苦しい状況下にある中で、どのように克服したのですか?

 

<森下氏>
ちょうど一年前をふと振り返ったら、ザンビアでも同じ経験していたんです。この先の不安、なんでアフリカに来たんだろう、と同じように落ち込んだ経験を思い出したのです。その「ストレスの既視感」のようなものを感じ、何とかなるだろう、もがき続けよう、という思考に変わりました。もう一つは「人に会うこと」です。独りでは良い答えが出せないと分かっているので、良い意味で人に頼る、行動を続け人と出会いや接点を増やして、ヒントを得続けることが解決に繋がりました。

 

<筆者>
その動き続けた延長線上で、あの本田圭佑氏にも会えたのですね。

 

<森下氏>
そうですね。動き続けたことによってチャンスが舞い込んできて、本田選手にも「あのアフリカの!」と認識していただいていたんです。これは動き続けたからこそだと思います。

 

もう一度アフリカへ。挑戦をリアルに伝えるためのYoutube

 

<筆者>
先日、また新たな挑戦を発表した森下さんですが、この決断に至った経緯や想いを教えて頂けますか。

 

<森下氏>
先ほども申し上げた通り、「アフリカ逆輸入Jリーガー」になる挑戦は、今シーズンは達成することができなくなりました。ただ僕は悲観していません。まだサッカーが森下仁道を表現する最高のツールである以上、僕はプロサッカー選手としてのキャリアを積み重ねる努力を惜しみません。挑戦の舞台は再度アフリカを予定しています(※渡航時期は当初6月を計画しておりましたが、コロナウイルスの影響で大幅に遅れそうです。目処が立ち次第発表させていただきます。)

 

<筆者>
あんなに苦しかったはずのアフリカを、再度活動の場所として選ぶに至った理由は何ですか?

 

<森下氏>
それは、アフリカにまだ僕が体感していない可能性や魅力がたくさん潜在しているからです。1年間アフリカでサッカーを経験し、現地選手の身体能力の高さを肌で感じたり、現地サポーターに受け入れてもらい、愛情を注いでもらいました。きっとまだ素晴らしい出会いや経験が待っている。アフリカには沢山の余白がある。そう僕は感じています。そしてそこにアジア人選手としてチャレンジする価値があることを確信しています。

 

<筆者>
でも相当苦しかったわけですよね?それでも戻りたいんですか?少し意地悪な質問ですが。

 

<森下氏>
正直なところ、アフリカにプロ選手として戻りたいか戻りたくないかと聞かれたら、戻りたくないです。シンプルにキツかったからです。でも、色んな人に支えられながら、そのキツさを乗り越えたからこそ今があるのは紛れもない事実です。次のフェーズでアフリカでもう一段階上のレベルで挑戦したい。そしてより多くの人に支えてもらいながら共に成長したい。その様子をリアルに伝えたいからこそ始めたのがYouTubeプロジェクトなのです。

 

<筆者>
なるほど、森下さんによるさらなる挑戦を動画を通して発信されるのですね。

 

<森下氏>
エリート選手とは程遠い凡人、森下仁道ですが、チャレンジャーとして本田圭佑さんを超える。そんな野望をまずアフリカで叶えてきます。

 

編集後記:彼の職業は"森下仁道"だと思う

一年前のアフリカ縦断中、ザンビアで私にピザをご馳走してくれた同い年の森下さん。その時あれほどまで未来に胸が躍ったのは、旅中独特の心地よさではなく、彼の表情や口から飛び出した野望の数々のせいだと今になって思う。夢というとなんだか儚い印象を受けるが、彼の見据える未来はどこか現実味を帯びた野望に近い。

大学、就職、とにかく逃げてきた私にとって、未来や自分自身と真っ向から立ち向かう彼の姿は、羨望を通り越し、せめて近くでその歩みを見届けたい、そんな気持ちにさせるから不思議だ。

インタビュー後、雑談交じりに、あなたは何になりたいんですか?と尋ねてみた。すると「あの人が頑張ってるから私も頑張る」そんな存在になりたい、モチベーターともいうんですかね、チャレンジャーですかね、と。

おそらく彼の目指す未来の姿には、現段階で職業という名のラベリングは出来ないのだと思う。分かりやすく卑近な言葉で定義してしまうと、どこか未来を狭めてしまいそうで。

そうだ、森下仁道ですね。と当たり前な返答をしているインタビュー録音を聴き、いま、少し恥ずかしくなっている。

 

マサヤ(@masaya