いよいよトーゴ編もラストに近づいてきました。
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この記事の目次
トーゴの海岸
首都ロメに滞在していると時々、潮の匂いが鼻を刺激してくれる。
それは海がすぐそばにあるからだ。
片側2車線の舗装されたまっすぐな道路を渡ると、ヤシ並木、砂浜、そして海と続く。
人々の憩いの場になっているこの海岸には若者やカップル、家族、そして旅行客など性別も年齢も人種も関係なく色々な人を魅了している。
私もその一人だ。
静かに波が押し寄せるこの海岸にいるとどんな悲しみも押し流してくれそうだ。
しかし、トーゴの人々にとって忘れられない歴史があることをこの海岸は知っている。
奴隷海岸の歴史
トーゴの人々はこの海岸をCôte des esclaves(コート・デ・ゼスクラヴ)と呼んでいる。
フランス語で奴隷海岸と言う意味だ。
1914年に書かれたこの地図だが、左下の方に「Slave Coast(奴隷海岸)」と書かれているのが分かるだろう。
この奴隷海岸は今日のトーゴ、ベナン、ナイジェリアの西部の海岸あたりを指す。
16世紀初頭から奴隷が廃止される19世紀までセネガルからアンゴラに渡る海岸は、集められた奴隷たちがこの海岸から遠く離れた大陸へ送り出されていた場所である。
二度と母国には戻ることはできない。
ここから1,000万人とも2,000万人とも言われる多くの人々が 北・南アメリカ大陸へと渡った。
ヨーロッパの奴隷貿易戦略は冷酷なものであった。
一部の現地の人たちを味方に付け、武器を渡し、彼らに襲わせる。いわば部族闘争を激化させる事で、壊滅に追いやるのだ。
トーゴには奴隷貿易の遺産というものは残されていないが、トーゴの人たちがその歴史を口頭で次世代に語り継いでいる。
西アフリカ地域には悲しい歴史を学ぶと同時に二度と奴隷というものを生み出さないよう、世界遺産に登録されているところもあり、セネガル・ゴレ島の奴隷の家が一例だ。
行けないけれど勉強してみたいと思うあなたにはJean Meyer著の「奴隷と奴隷商人」が分かりやすく全体像を教えてくれる。
それでも美しいトーゴの海岸
そんな悲しい歴史があると思わせないほど、トーゴの海岸は美しい。
地元の人たちに聞いてもトーゴの海岸は美しいと言う。
暇な時にふらっと立ち寄っても良し、悲しいことがあって忘れるために立ち寄っても良し、家族とワイワイしても良し、うってつけの場所のようだ。
どこまでも続く海は優しい青色をしている。
穏やかであるが、波は高いので海に入るのは禁物だ。
現地の人も海岸を歩いている人はたくさんいるが、泳いでいる人はまず見ない。
ロメの市街地周辺の海岸では見かけないが、トーゴはコートジボワールやガーナに比べ、海賊が少ないことからトーゴの海岸で荷物を降ろし、コートジボワールやベナン、ガーナなどに運ぶそうだ。
石油などの天然資源が乏しいトーゴでは政府主導の元、急ピッチで湾岸整備を進めている。
ゆくゆくは周辺国の物流ハブとなるべく開発が進んでいるそうだ。
この海岸では漁をしている人たちもいる。
ここで獲られた魚はロメの台所、グランマルシェで売っている。
魚を獲る方法はいたってシンプルである。
大人の人が海にジャボジャボ入りながら、網をなるべく遠くまで配置する。後は子供たちも一緒になって網を引っ張るだけだ。
声をかけると快く網を引っ張らせてくれた。
トーゴの食文化
大好きなFanYogoのアイスを食べながらのんびりしていると幸せをひしひしと感じる。
FanYogoとはFan milkというトーゴの会社が売っているアイスである。
トーゴだけでなくガーナやベナンなど周辺地域でも販売している。オススメはヨーグルト味。
そんな中、地元の人たちに人気のサンドイッチ屋さんを発見した。
屋台を切り盛りしているお母さんは定期的にこの海岸にやってきてサンドイッチを販売しているらしい。
トーゴではフランス食文化の影響を受けてバゲットのサンドイッチがどこにでも売っている。
小腹が空いたときに手軽に食べることができるので旅人にはうってつけの食べ物だ。
慣れない人はお腹を壊すこともあるのでそこは自己責任である。
お母さんがこの移動式サンドイッチを始めたきっかけは娘さんの一言だった。
そんな美味しいサンドイッチを独り占めできる私は幸せだね。
娘さんが学校に持っていったサンドイッチを友達に分けてあげたところ、美味しいと好評だったそうだ。
もともと野菜などを販売していたが、サンドイッチを売った方が売れるかもと思い、商売を始めた。
買いに来ていた少年たちはここのサンドイッチが世界一美味しいと話してくれた。
キャベツ?のような野菜を特製のタレに漬け込んだものを挟んでいる。いたってシンプルだが、タレが甘酸っぱく癖になる美味しさだった。タレの作り方は秘密だそうだ。
トーゴでの贅沢な一日
そうこうしていくうちに日が暮れる。
夜の海岸は昼間とは違った様子で見応えがある。
開発が進み、ガーナとベナンを結ぶ長い主要な道路には街灯が立ち並び暗い夜道を照らしている。
海岸で出会った人たちは昔と様子が変わったと口々に言ったが、彼らにとってそれは良い意味であればいいなと思った。
きっと私が見たこの風景も1年後、3年後はすっかり変わっているのだと思う。
過去の悲しみで包まれた海岸ではなく、この国が希望に満ち溢れた発展を遂げる象徴の海岸として姿を変えていくのだろうか。
「ただ海岸をあてもなくブラブラする。」
生きてきた中で一番、贅沢な1日であった。
ロメの海岸へ行くには…
旅にちょっと疲れてしまった時にオススメ。
波の音と海風が癒してくれる。
<アクセス方法>
とにかく市街地から南に下れば海岸にたどり着く。
ぜひお気に入りの場所を見つけてほしい。
<その他>
- 市街地や観光地と違って押し売りなどはないが、スリや置き引きには引き続き注意が必要。
- 飲食は基本できるが、ゴミはしっかりと持ち帰ろう。
つづく。