
歴史的な資料がほとんどない謎に満ちたルワンダのアート作品「イミゴンゴ」
この魅力にハマり込んだ日本人女性がいます。
かくいう私も、うっかり?ハマってしまった1人であったりします。
まずは、この動画御覧ください。きっと私の言いたいこと、伝わると思います。
この記事の目次
イミゴンゴにはまり込んだ 加藤雅子さん
イミゴンゴって何?
散歩で見つけた不思議なアート
加藤さんが日本かからルワンダに移住した当初、街の散策をしているとよく目につくものがありました。
あるときにはお店の壁に、またある時にはカフェの展示スペースに。
幾何学模様の板があちこちに飾られていました。最初は絵画かと思って近づいて、よく見ると表面は凹凸あり。絵画ではありませんでした。
食い入るように見つめていた加藤さんのもとに店員さんが近づいてきて、衝撃の回答をしました。
イミゴンゴの正体、それは・・・
店員さん:「これ、知ってる?」
加藤さん:「知らないです」
店員さん:「匂いかいでごらん」
加藤さん:「.....炭?みたいな、畳、みたいな匂いします」
店員さん:「何で作られてると思う?」
なんて会話が続いたのちに・・・
店員さん:「牛糞だよ」
そう、ズバリ、イミゴンゴの原材料は子牛の糞。
ルワンダの伝統的なアートで、指先で少しずつ板の上に乗せながら幾何学模様を作っていきます。
実際にはほぼ牛糞の匂いはなく、墨のような畳のような香りがあるそうです。
イミゴンゴを追いかける
すっかりその魅力にとりつかれてしまった加藤さん。イミゴンゴという名前を知り、その由来やデザインの意味に興味が出てきたので色々と調べるものの資料は多くない。
国立博物館に聞きに行くも、現在調査中とのことで資料や先行研究はごく少数。
図書館やアーカイブ施設でも情報にたどり着くことができず、国立大学の歴史研究者なら知ってるかも、と問い合わせるも、イミゴンゴについて研究している方を見つけ出すことができませんでした。
無いなら、やろう。
そう決意した加藤さんは、ついにイミゴンゴ発祥の地にまで赴きます。
ルワンダでは19世紀頃からアルファベットが使われ始め、それまでは口頭言語。人々の間で受け継がれてきた口伝の力が必ずあるはず!と現地に。
発祥の地は、ルワンダ東部のキレへ郡
首都のキガリから片道約4時間半強の場所にあるキヘレ群。その中でも中心地から45分ほどバイクタクシーに乗って山に入った「Nyarubuye」(ニャルブイェ)というエリアが大元の発祥地と言われています。

ニャルブイェは「岩のある場所」の意
ニャルブイェのエリアはかつてGisaka (ギサカ) 王国という独立した国であり、当時の王子様 Kakira (カキラ) が1800年代前半にイミゴンゴを作り始めました。
発祥地でイミゴンゴを作っている方にお会いしお話を聞くと、出るわ出るわ。今まで何の資料でも見つからなかったようなお話がざくざく出てきたそうです。
加藤さんが出会った中で一番長い方は、イミゴンゴ製作歴56年。ルワンダの平均寿命が67歳とされている中で、恐るべきご経験の持ち主です。

発祥地ニャルブイェ エリアにある工房の作り手さん達
イミゴンゴの製作に長年携わっている数十人の方にお話をきき、デザインの名前や意味、その歴史などを聞き取りして回りました。もちろん全員が全員同じ回答をするわけではなく、口伝のため (口伝でなくても) 誤差はあります。
しかし加藤さんにとっては、その誤差がまた魅力的で、長い時間の中で発生した味を感じるそう。
伝えられてきた「たった一本の正しい糸」を探し出し、それのみを正当とするのもキリっとしていて良いですが、始点からここまでたどりついた大きな潮流そのものを、イミゴンゴの歴史として観測したい
という思いの方が強くなったそうです。
ウンチを素手で練る日々

聞き取りだけではなく、地べたに座り、制作体験に没頭している加藤さん。
生後2ヶ月〜1歳くらいまでの(母乳と草を半々くらいで摂取している)子牛の糞を集めることからスタートするイミゴンゴ作り。
・糞と混ぜる灰を作るための特定の種類の木を集めること
・灰にしたらそれをふるいにかけて、牛糞と混ざりやすいように粒を細かくしておくこと
①子牛の牛糞と灰を練る。(匂い消しと乾燥時の割れ防止)
②30分ほど捏ねます。
③下絵に沿って牛糞をつまみながら乗せていきます。山は高すぎず低すぎず、難しい指づかい。
④1日 天日で乾燥させて、ヤスリがけ。
⑤塗料を塗って 1日、日陰で乾燥させます。
⑥柄に沿って色を足す。
⑦再び1日、日陰で乾燥させ、色の上からヤスリがけ。そしてまた色塗り。それを3回繰り返します。
3回繰り返した後は、こんなにもなめらかになります。
材料が全て手元に揃った状態で、1つのイミゴンゴを製作するのに約5日〜7日かかります。60cmを超える大判のサイズだともっと。
ご覧の通り、もちろん全てが手作業です。
現在は各地にて 時短で製作する方法も出てきているようですが(子牛の糞にこだわらない、灰にする樹木の種類にこだわらない等)、今回の展示会では、伝統的な手法を守りながら作り続けている発祥地のイミゴンゴを届けてくださいます。
デザインは多種多様
伝統的なデザインは、黒、白、赤、グレーの色を使った幾何学模様のものですが、最近はそれ以外の色を使ったモダンな柄も登場しています。
デザインの由来を追って
数ヶ月かけてイミゴンゴのことを調査し続けているものの、新しい人に出会えば出会うほど新しい見解が広がると加藤さんは語っています。
写真は、国立博物館省のメンバーとのミーティング時のもの。
同じデザインでも解釈が異なり、同じ名前でも解釈が異なります。
例えば、ンゴンドという名前のデザインがありますが、それは別の名前でも呼ばれています。
ンゴンドという単語が、何に由来するのか、語源は何か、も解釈が異なります。
今現在使われていない単語のため、古語に詳しい人に聞き回り、その人たちもそれぞれ解釈が異なります。
「この単語はこう言う意味です!以上!」という辞書のようなものはなく、国立博物館省のメンバーとのミーティングはもう3回以上になるにもかかわらず、会って話すたびに、毎回新しい解釈が生まれていくそう。
知れば知るほど知らないことが増えて、ますます断定などできなくなります。
実際に加藤さんも、調査のゴールは?と聞かれるそうですが、ご本人もよく分からないそうです。
「終わる時は私の限界が来た時。もしくは、もう全部知り尽くした!となる時でしょう。」そうはいいつつ、そんな時は来ないと思っている加藤さん。