ルワンダにある日本人宿KISEKI(キセキ)が主催する、スラム街ツアー「Tour of Beauty」に参加してきた。
このツアー名には「スラム」という単語は使われていない。
女将である山田美緒さんは、出来る限り「スラム」という単語を使いたくないという。それはあまりにもマイナスイメージに直結してしまうから。
可哀想、怖い、惨め、そんなイメージがどうしても強くある「スラム」で暮らす人々。
実際に行ってみて、美緒さんが伝えようとしていることの一端を感じることが出来た。
この記事の目次
ルワンダの日本人宿KISEKI(キセキ)とは
創業当初は、本格的な日本料理を提供する高級レストランだった。
ある一人のスラム街に暮らす貧困のシングルマザーとの出会いをきっかけに、キセキを地域のシングルマザーをサポートする場所にしようと経営方針を大きく変更。
「地域のお母さんが笑顔で暮らせるように」をコンセプトにコミュニティと連携し、シングルマザーの雇用創出、彼女たちが抱える課題の解決に取り組んでいる。
キセキの取り組みについてはこちらの記事で全てを紹介中!
サクッと解説 ルワンダってどんな国?
- ルワンダは1500mの高地にあるため、年間を通して過ごしやすい環境
- 他のアフリカ諸国に比べると抜群に治安がよく、夜も出歩ける貴重な国
- 街は綺麗に整備され、ゴミ一つ落ちていない美しい国
- 1994年の大虐殺から急速な復興を遂げ「アフリカの奇跡」と呼ばれている
- 現在はICT立国として飛躍的な経済成長を遂げている。
- 日本からの入国なら「イエローカード(黄熱病予防接種)」必要なし
- 事前ビザ申請必要なし!空港でアライバルビザの取得が可能
※2019年7月13日現在情報
異なる顔を持つルワンダ
驚くほどに綺麗に整った街
1994年にあった大虐殺からの復興、アフリカの奇跡と呼ばれているほどに発展しているルワンダ。
街を歩けばゴミは一つも落ちていないし、最低限のことに気を付けていれば夜の一人歩きも特に問題ない。
道は綺麗に舗装され、街路樹もあり、高いビルや高級そうな住宅がたくさん立ち並んでいる。
晩御飯を楽しむために、こんなお洒落なカフェに女子だけで歩いて行ける、それがルワンダ。
ごく一般的な「アフリカのイメージ」という乱暴な言い方で表現するならば、驚くほどに綺麗に整った街。
だって漠然としたアフリカのイメージって舗装されていない道路で、子供は裸足で、車はボロボロで、頭の上に荷物を載せて歩いて運んでいる、そんな感じだった。私はそうだった。
だからルワンダで一面の夜景を見たとき、自分の無知さ加減を知ったし、やっぱり来てよかったって思ったんだ。
足を運んで、この目でみて、たとえそれが数日でも、感じること、考えることは必ずあると思うから。百聞は一見に如かずはどこまでも真実だ。
そう、そんな早速アフリカのイメージというものをすっかり変えてくれたルワンダの首都キガリの街並み
でもすべての人がその恩恵を受けているわけではない。
「スラム」と呼ばれる場所がある
まずは、AAA管理人マサヤが作った動画を見て欲しい。
先日「ゴミ0な国」としてルワンダの街並みをupしましたが、私の知らない裏側がありました。アフリカの奇跡、綺麗なIT立国、あらゆるポジティブな形容と共に打ち出されたイメージ戦略の陰に生きる人たちがいることを知りました。私は一部しか見ていないので多くは語れませんが、これもルワンダです。 pic.twitter.com/AEuJHVkQBO
— マサヤ | 秋元才加さんとアフリカへ (@masayainagawa) 2019年3月21日
首都キガリには農村部から職とより良い暮らしを求めて、兄弟、親戚、友人を頼って村人たちがやってくる。
しかし職に就けず、満足な収入が得られないことがほとんどで、不法居住のスラム街で貧しい暮らしを送っている。
そこに住む子どもたちの中には学校に通えない子がいる。ごみを漁るストリートチルドレンも。
日銭を稼ぐ仕事をしている人がほとんどで、今日のごはん代を稼ぐための仕事をしている。明日の収入があるかさえわからない、だから1年後のことなんて考えない。考えられない。
- 足場の悪すぎる道
- 生活排水とそこら中に落ちているゴミ
- 土の壁とトタン屋根の家
- 4畳2間に9人の家族で暮らし
- 若くして子供を作って、でも旦那さんに逃げられたり、離婚したりで数人の子供たちを抱えて生きるシングルマザーたちがいる
キセキで働いているシングルマザー達だ。
スラムというと暗い、怖いというイメージがあるかもしれないが、ママたちはお互いに助け合いながら明るく強く暮らしている。
Tour of Beauty ツアー全行程
今回、私が参加したのはママの家でのクッキング体験も含む3時間ツアー
まずはキセキで待ち合わせ、美緒さんやキセキにいる日本人スタッフからスラム街のことや、シングルマザーたちの現状を聞く。
キセキからスラム街までは徒歩5分ほどの距離。
ここから先は、実際にスラムに住んでいるシングルマザーがガイド役になってくれる。
高級住宅地でもあるエリアを歩いていく。
しばらく道なりを歩いていくと、本当に突然、スラムエリアの入り口が右手に見えてくる。
足場も急に悪くなる。未舗装どころか、ガタガタの道、すぐ脇は大きな段差があり、ゴミが溜まり生活用水が垂れ流されている窪地が続いていく。
足場は、組まれた木々のみという場所も
家々は狭く密集している。人一人がやっと通れるほどの通路の奥に、最初のママの家がある。
4畳2部屋で9人で暮らすママの家、手前がリビング兼夜はマットを敷いてベッドに。壁には子供達が書いた絵が飾ってある。
奥のこのベッドが置いてある部屋では5人が眠るそうだ。
2軒目のママの家もかなり手狭だ。壁にはキリストを描いた絵が飾ってある。
日曜日には教会に必ず行くという。ルワンダも信心深いキリスト教徒がたくさんいて、日曜日に教会に行く人々はとても多い。
ママが讃美歌を歌ってくれた。「神様がみていてくれると思うと、日々を頑張れる」ママのその言葉が胸に響いた。
3軒目のママの家では、「マンダジ」と呼ばれる揚げドーナツ作りを体験。
木の机が、作業台に早変わり。生地をこねる綿棒はビールの大ビンが代わりになる。専用のキッチンアイテムなど、本来どこまで必要なのかなって思ってしまうほど、手際よく作業は進んでいく。
ガスはないので、七輪で火を起こす。キッチンはないので、外がそのままキッチンペースに。
しばらくすると、香ばしい良いにおいがたちこめてくる。
出来立てのマンダジはとても美味しくて、そして何より優しい味がした。
Tour of Beauty に参加して
ここに生きる人は、可哀そうなのかな?可哀そうってなんだろうね。
確かにね、安定した収入源がなく、日銭をなんとか稼ぐ。学校に行かせるお金がなくて、ゴミを漁って食べる子供がいる。
そういった数日後がどうなっているのかわからない、っていう不安定な生活は改善された方がいいと思う。
安定した収入を得て、学校に安心して通えるようになって、ご飯を家族でおなかいっぱい食べられるようになる。
日本では当たり前のことが、私たちには当たり前のことが、出来ない人が世界にはいる。
わかってることだけど、実際に会って、話してみてみて、ようやくその存在が「自分の知っていること」としてわかるようになる。
実際その場所に足を踏み入れたら、楽しそうに遊んでいる子供たちがいて、家の入口で座っておしゃべりしている人たちがいて、ただただ「普通の生活」を「日常」を淡々と過ごしている。
教会に行ってお祈りをして、毎日家でもお祈りをして、神様の存在を感じながら、家族で、近所で、地域で助けあって生きている。
そこは可哀そうで悲惨な世界なんかでは断じてない。
日本の方がよほど悲壮感漂っているよ。
そう思った。
生きることは本来喜びなのに、生きることそのものを苦痛と感じてしまうことがある。
どっちが良くて、どっちが正しくて、どっちがあるべき姿か、それは誰にも決められることじゃない。
でも、子供になりたい夢があるなら叶えらて欲しいし、お母さんにも洋服を作ったり、お洒落を楽しんだりしてほしい、家族が毎日おなか一杯栄養のあるご飯を食べて、安心して眠って欲しい。
大切な人と共に生き、笑い合いながら、やりたいことを話し合ったりしてね。
そうは思う。そうは願う。その為に、シングルマザーたちのことを、その子供たちの事を、心から愛して、考えて、寄り添ってルワンダの地で生きている美緒さんがいるのだから。
「じゃぁ、私に出来ることはなんだろう?」
そう考えてみること、それだけでも何か変わることに繋がればよいなって思う。
私は、あくまでも私が感じたアフリカを、それぞれの国を、そのまま飾らずに、イチ旅行者として、綴っていこうと思う。
アフリカに来たから何か、出来ることを考えることだって義務じゃないし、そういう常に国際協力的な視点でしかアフリカを見ないのも、なんか変だと思う。
アフリカを周って、あー!楽しかった、また来たい。それだってきっと回りまわって誰かのおかずを増やすことになるかもしれない、と私は思うのだ。
Tour of Beauty 詳細
プログラム概要
このツアーでは、そのエリアに暮らすシングルマザー“ママ”があなたのガイド役・通訳になる。
キセキ到着からプログラム終了まで“ママ”がマンツーマンで同行、サポート。
まずは“ママ”がキセキでお出迎え、簡単なブリーフィングのあと、実際にスラム街を視察、家庭訪問をして彼女たちの生活環境を知る。
Tour of beauty 詳細
月曜~土曜日 9時~16時(最終土曜日のウムガンダ、年末年始、4月のメモリアルウィークは除く)
■所要時間:
①1時間 ②3時間
■参加費用:
①1時間 1500円(12,000rwf)/人 ②3時間 3000円(30,000rwf/3時間)/人
■参加費用に含まれるもの :
参加者1人につき1人のガイド・通訳シングルマザー
ツアー前のブリーフィング
キセキWiFi
②はマンダジ(揚げドーナッツのようなもの)作り体験
■注意:
①お金を貸すことはトラブルのもとになるので絶対にしないこと。お金を貸すときはあげるのだと思うこと。
②外国人と一緒にご飯を食べに行く・遊びに行く=奢ってもらうという感覚。
③ルワンダはチップ文化があるが、チップは2,000rwf以上は渡さないこと。金銭感覚が狂ってしまうと今後キセキで働くことが難しくなってしまう。
キセキの想い
1. ルワンダのリアル、たくましく生きるママたちの姿を見てもらいたい。
ICTなど最新のテクノロジーを使い急成長を続けるルワンダの企業や起業家訪問とは別の顔を見る体験に。極貧生活の中でも希望を持って力強く生きるママたちに触れ、ルワンダの底力を実感できる。
2. シングルマザーの雇用創出
シングルマザーたちの生活を改善する方法のうちの一つは、雇用を創出し、現金収入を得られるようにすること。一時的な施しでも十分その日暮らしを支えることはできるが、やっぱり持続可能なほうがいい。
キセキでは従業員の80%を地域のシングルマザーとし、日本流のおもてなし、一流ハウスキーパー、ワーキングママとしてトレーニングをし、よりよい条件の就職を斡旋をし「卒業」をさせている。
レストランだけでは雇用に限りがあるので、先に述べたようにキセキは様々なスモールビジネスをどんどんと創り出している。キセキに収入の希望を求める人のウェイティングリストはまだまだ長いのだ。