スーダンで挑戦し続ける、これが私の生きる道。-リヤード齊木-

スーダン在住の日本人・リヤード齊木のスーダン実録第6章。現地で活動する彼が思う、日本語を教える意義。そして彼の生きる道を綴ります。

 

5章までの流れ

スーダンをテーマに連載をしてきました。ここで一度話の流れを整理します。

 

1章では、青年海外協力隊としてスーダンに派遣されて人と人とが助け合う理想郷をみつけたが、近年の経済悪化によってそれが崩壊しかけているという話。

 

2章と3章では経済が悪化している理由として「原油」と「パン」をキーワードに、構造的問題が表面化している話。

 

そして4章では難民というキーワードで首都の人口が増加し社会問題化していること、その難民つながりで5章ではシリアの内戦下からやってきて、スーダンで日本語能力試験を受験し日本留学の夢を果たした青年についてお話ししました。

またその後経済悪化による政権打倒デモが起きて青年海外協力隊が撤退し、日本語教師がずっと不在になっているということについてもお伝えしました。

 

 

ここでは私のスーダンでの日本語教育活動の方向性を

  1. 直接の成果
  2. 価値への取り組み
  3. 人材の育成

という観点でみていきます。

「 スーダン人が日本語を学べる環境作りを」活動の3つの意義

1.直接の成果=日本語のクラスを開講し、日本語を学ぶ場所を提供

語学を学ぶことは単にコミュニケーションの手段が増えるというわけではありません。語学を通して異文化に触れることで、新しい価値観や発見に出会うことができます。なぜなら言葉には、その言葉を話す人々の文化が埋め込まれているからです。

 

例えば、スーダンで話されているアラビア語には男性名詞と女性名詞、双数形といった日本語にはない概念があります。またアラビア語が表音文字である一方、日本語には漢字という表意文字を使用します。日本語学習者は文字自体が意味を持つことを発見します。このように言語を学ぶことで新しい思考を手に入れることができるのです。

 

また、他国の文化を知ることで、自国の文化を客観的に俯瞰できるようになります。今まで外とのつながりが弱かったスーダンの人にとって客観的に自分たちの姿を見ることは、積み重なっている社会問題解決の第一歩目となります。

 

今現在、問題を抱えているスーダンの暮らしを変えていくのは先進国でも人道支援団体でもありません。スーダン人の一人一人の手にかかっています。日本語教育もその一端を担うことができるのではないでしょうか。

 

②価値への取り組み=日本語能力の資格化

スーダンで日本語を学び、その努力が適切に評価されるように日本語能力試験を再びスーダンで実施します。

 

外国人の日本留学に利用されている試験は日本留学試験ですが、スーダンではこの試験が実施されておらず受験することができません。受験できない地域に住む人は、日本語能力試験が代用となります。日本語能力試験のN2以上のスコアを持っていることが留学への条件としている大学が多く見受けられます。

 

つまり、日本語能力試験をスーダンで実施し、スーダン人がN2のスコアを持つことは日本への留学の道を開くことになります。実際に今現在、N2のスコアをもったスーダン人の留学手続きの手伝いをしています。

 

また新政権では外資の門戸を開いていく政策が想定されており、それに伴い日本企業のスーダン進出も現実味を帯びてきている現状で、今後日本語を話せる人材は活躍の幅が広がっていきます。その際にこの試験のスコアが能力の証明になるのは間違いありません。

③人材の育成=スーダン人講師を育てる

毎学期100人程度の受講生が集まり、需要の高い日本語クラスですが、2012年の開講以来JICAのボランティアに講師を依存してきました。その活動の脆弱性は治安悪化による協力隊の撤退コロナ流行等の不測の事態に対応できないことで明らかとなってしまいました。クラスの再開を望む声があがっていますが、スーダン人のなかで日本語を教えられる能力を持った人はまだいません。

 

私が当分の間クラスを受け持つことになりますが、私にしても生活があり、どこまでスーダンで日本語をおしえていけるかはわかりません。そこでスーダン人の中で日本語を教えられる人材を育成していくことが重要となってきます。

 

幸いにも現在2名のスーダン人が日本語の先生になりたいと言ってくれています。この2名にノウハウを教え、日本の制度を使い日本で日本語教師となる学びができる機会を持たせようと考えています。

まとめると、日本語クラスの再開と日本語能力試験の実施、そしてスーダン人講師の育成を今後の活動としています。地味な活動ですが、これが私の生きる道です。

 

これが書きたかった内容のすべてです。

 

今までありがとうございました。

 

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