「資金調達だけが私の存在意義」ウガンダのプロサッカーチームGM大場由太

ウガンダでプロサッカーチームを経営する日本人がいる。

 

サッカー元日本代表・本田圭佑選手がオーナーを務める「SOLTILO Bright Stars FC」のゼネラルマネージャー大場由太だ。

 

現在27歳である彼の人生に、サッカーという文字は何一つなかった。

 

サッカー畑で生きてきたわけではなく、自分はずっとバスケをやってきたので。お金持って来れなかったら存在意義がないので、いらないんですよ。私が存在する意義はそこだけです。

 

そうキッパリと言い切る彼は、ウガンダ法人たった1人の社員として、クラブの運営や会計管理、チームとの交渉、スポンサー営業、講演を、すべてこなしている。

 

彼をここまで支える強い想いは何なのか。自分の存在意義を冷静に語る。

 

東京アフリカコレクション副代表にしてALL ABOUT AFRICA管理人の稲川雅也が、インタビューを敢行!

 

稲川雅也(いながわまさや)
1995年 神奈川県出身|株式会社東京アフリカコレクション取締役副社長|アフリカウェブメディアALL ABOUT AFRICA代表|フリーとしてアフリカ旅発信やイベント登壇も精力的に取り組む|学生時代にタンザニア教育支援の学生団体ASANTE PROJECTを創設、代表を務めた|2019年アフリカ10ヵ国縦断達成。
大場由太(おおばゆうた)
富山出身。SOLTILO UGANDA Ltd.代表/SOLTILO Bright Stars FCゼネラルマネージャー。小学3年生からバスケットボールを始め、全国大会に出場する。新卒隊員としてモンゴルにてバスケットボール指導に従事、JICA国際協力推進員として国内事業に2年半携わる。2018年10月から現職。オーナー・本田圭佑の想いである「サッカーを通して世界を平和に」の実現に向けて日々奮闘中。
今回もファシリテーターを務めるのはKorinです。
Korin (コリン)
京都出身。6年間雑貨バイヤーとして会社務め、退職後イギリスに2年在住、旅した国は世界41ヶ国。ふと "アフリカに呼ばれている" と会社を衝動的に退職すること2度目。マサヤと旅の途中でたまたま出会い、共にアフリカを周遊後、AAAに参入。ライター、編集、営業なんでもこなしている。自身の旅先から買い付けてくるオンライン雑貨屋「KIZUNGUZUNGU」のオーナーでもある。

 

たった1人の社員。ウガンダプロサッカーチームGM大場由太

大場さん自身はバスケ人生を歩んで来られて、協力隊での任地国はモンゴル、職種もバスケのコーチとしてでした。そんな大場さんが、何故アフリカ、そしてサッカーという業界に飛び込んだのか、私、非常に気になります。この対談で大場さんの想いが伝わる内容になればいいなっと思っています。よろしくお願いします。

 

記事も書いていただいていますが、大場さんから改めて今の活動についてお話しいただけますか!

 

 

大場由太です。SOLTILO UGANDAという会社の代表(GM)をしています。弊社はウガンダ1部リーグのプロサッカーチームの経営をしています。買収してから3シーズン目に入るのですが、私はGMとしては2代目になります。昨年の10月に就任したので、ようやく1年が過ぎたところです。

 

 

普段は、クラブの運営や会計管理、チームとの交渉、スポンサー営業、講演を、社員が私ひとりなのですべてやっています。

 

SOLTILO株式会社とは

社員お1人というのは、ずいぶん大変そうですね・・・。SOLTILO株式会社っていうのは複数の事業を行っているのですか?

 

弊社は大阪に本社があるSOLTILO株式会社のウガンダ法人です。なので、ウガンダ法人の社員としては私1人になるのですが、SOLTILO本社では、国内のサッカーグラウンドの運営や、国内外のサッカースクール運営、そしてウガンダとカンボジアでプロサッカーチームの経営もしています。他の系列企業でいうと、アスリートのキャリア支援だったりとか色々あります。

ソルティーロ(SOLTILO)とは、スペイン語の“太陽(SOL)”と“スタイル(ESTILO)”を組み合わせた我々の概念を表現する言葉です。SOLTILO株式会社は太陽のように唯一無二の存在であり続け、光り輝く未来を目指し、スポーツを通して世界中に夢や希望を与え感動させ続けます。引用元:SOLTILO株式会社HP

 

なるほど、いろんな事業をされているんですね!先ほど、2代目だとお話しいただいたように、途中から大場さんは参画されたんですね。

 

そうなんです。前任者がどのクラブを買収するのかというリサーチをアフリカ各国で行って、めぼしいクラブを探す調査の結果、ウガンダが一番いいんじゃないか、ということで、現在に至ります。

 

企画当初から、アフリカでプロサッカーチームを作ろうという話だったんですか?

 

そうですね。オーナーである本田圭佑氏が、アフリカに興味を持ったのが2010年の南アフリカワールドカップの時で、孤児院にいく機会がありました。その孤児院で、子ども達とふれあって、話を聞くうちに、理不尽に機会に恵まれなかったりとか夢を失った子ども達が多いので、自分が育ってきたサッカーで、何か役に立てないかなと考えたそうなんです。

 

https://keisuke-honda.com/gallery

 

2016年に彼が、国連財団のグローバル・アドボケート・フォア・ユースに就任してウガンダに渡航しました。現地での難民の子どもたちのサッカーをした時に、ウガンダ人というか、アフリカの人達の身体的なポテンシャルの高さや可能性がみえて、”これは本格的にサッカーでのアフリカ支援はいいんじゃないか”って思ったんです。

 

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その手段のひとつとして、まずはプロクラブを経営してピラミッドのトップを押さえて、そこから青少年の育成や、アカデミーの育成を草の根的にやっていこうという計画なんです。

 

国連財団(UN Foundation)は米の公共慈善団体。1998年、実業家で慈善家のテッド・ターナー氏によって設立された。世界の喫緊の諸問題に取り組み、アドボカシー、市民へのアウトリーチ活動を通じて、国連に対する支援を広めるべく、官民パートナーシップ構築を目的とする。 引用元:国際連合広報センター

 

すごい壮大な計画があるんですね!そのクラブ「SOLTILO Bright Stars FC」はどれくらいの歴史があるんですか?

 

91年からあるのでもう20年近いですね。ウガンダではよくある政府系や大企業がバックについているわけではなく、オーナーや株主がお金を出し合って経営してきた草の根的なクラブだったんです。でも経営難に陥ってしまって・・・。そこで我々がクラブを探しているっていうところで合致しました。

 

 

ウガンダだと、政府系の団体や警察、そして都庁的なところがクラブを持っていることが多く、中には刑務所が経営しているところもあるんですよ。

 

 

そういう税金で潤っている団体がクラブ経営をしている中で、我々のようなクラブはごく少数なんです。なのでそもそも経営自体も難しいし、地元のコネも正直ない状態。だから本当にチャレンジングではあります。

 

「本田」の名前は使っていい。ただし資金調達はゼロスタート!

 

本田さんが直接クラブにお金を出すってことはないんですか。

 

ないですね。それはどのグループ企業もそうです。そのかわり自由に任せて貰えるし、本田圭佑という名前はどんどん使っていいと言ってもらってます。彼自身の考えとして、「サポーターあって、スポンサーあってのクラブなのでオーナーがお金をだすから無理矢理まわすクラブには存在意義はない」というものがあって、そこに私たちも共感しているので、応援して貰えるクラブ作りを目指しています。

 

サポーター、スポンサーあってのクラブ。なるほど、確かにその通りですね。

 

クラブ運営にあたっては、私自身もスポンサーっていう形が対当だと思っています。出資とはまた形が違うというか。出資になるとビジネス的な立ち位置とかがどうしても絡んできてしまう。実際の運営は、我々に任せていただくんですが、一緒にクラブを育てていくとか応援していって、今はまさにクラブの創世記にあたりますけど、意義とかパッションに賛同してパートナーとして一緒に盛り上がっていきましょうよっていう方が、クラブとしても嬉しいですね。

 

SOLTILO Bright Stars FCの運営が、ウガンダサッカーの改革に繋がる

すでにあるプロサッカーチームとはいえ、ゼロからやるに等しいみたいなものですね。

 

実は、もともとあるクラブを買収したというのも難しさのひとつで、新しいクラブをゼロからつくるのとは違って、元々オーナーや株主や、サポーターがいるわけですよ。彼らにしてみれば、いきなり「今日から我々が経営します」って日本から知らない人達がやって来たようなものなので、内部統制を取るのは難しいし、ブランディングもすぐに変えられるわけではない。

 

コーチはウガンダ人なんですか?

 

ウガンダ人です。コーチが練習に来なかったりしますし・・・なんのために働いてるの?みたいに思うこともあります。選手も練習休むことも多いですしね。なかなか道のりは厳しいですよ。

 

 

人材や技術面といったソフト面も、施設とかコートとかのハード面もどちらもまだ足りていないようですね、、。

 

ハードなんてもう、エグいっすよ!
そもそもホームコートがないんですよ。昨シーズンまでは車で1時間以上のところまで毎日通って練習してました。それじゃあ、移動のリスクもコストもかかるので、今年からは首都カンパラ近くでコートを借りました。

 

 

そしたら、まぁ20分くらいなんですけど、それが豪雨によってびちゃびちゃになって、芝も全部はげちゃって、ついにはサッカー協会から使用禁止令が出ました・・・。

 

 

でも翌日も試合あるし、「どうすんの?」ってなって、結局昨シーズンよりもっと遠い練習場にいかないといけなくなって。ハード面のクリアはウガンダは本当に難しいです。

 

それはどこのプロクラブも似たような状況なんですか?

 

似てます。ウガンダの1部リーグで16チームあるんですが、そのうちカンパラ(首都)をホームにしているところが12、3あるんです。でもそのうちカンパラ内にコート持っているのは6チームあるかないかくらいで、後はわざと圏外の遠いところまで通ってますね。

 

カンパラにホームを置かないのは資金的に厳しいからですか??

 

そもそもカンパラにスタジアムがないんですよ。なのである圏外でホームにするしかない。将来的にはグラウンドをもって、管理して、国際試合を誘致出来るようにもやりたいんですが、インフラ整備は時間的にも資金的にもかなり長期的なプランになりますね。

 

1チームというよりはウガンダサッカーの立ち上げですね、完全に。

 

ウガンダサッカー協会を動かしていくっていうのも、不可能ではないと思うんですが、まだ自分たちにそこまでのパワーがないので・・・。ブライトスターズっていうチームが相当成長して、最低でも優勝して、威厳と発言権を持った上で、ウガンダサッカーを変えたいんですみたいなことは最終的には言おうと思ってます。グランド作りたいから補助を申請するとか、そういうレベルに達したい。一クラブが出来ることと、協会が動いてやることでは全然違うので。そのためにはまず何よりクラブとしてのレベルをあげていかないと。

 

 

プロ選手だって死活問題。1部リーグに残れるか。

 

選手はプロとして食べていけてるんですか、、?

 

選手によりますね。実際食べれていない選手は練習終わったら働いたりする人もいます。

 

 

現在は1部リーグに所属してるんですか?

 

今のところずっと1部リーグなんですが、今シーズンが苦戦していて、降格する恐れもあります。

 

今もシーズン中ですよね?日本に戻ってきてて大丈夫なんですか?!

 

私たちはコーチでもないし、試合そのもののために出来ることってないんですよ。それよりかは、オフシーズン中の交渉とかがメインだったりするので、オフシーズンに死に物狂いで動くっていうのがGMの仕事ですね。シーズン入ったら積み上げてきたもので「はいこれで頑張って!」って選手たちにいかに良いバトンを渡せるか、ですかね。

 

資金調達だけが私の存在意義なんです。

大場さんは、お給料は貰ってるんですか?

 

現在はスポンサー企業は1社のみで、「ヨシノ自動車」という中古自動車販売をウガンダで手がけている日系企業にスポンサードいただいています。ユニフォームの鎖骨部分にヨシノさんのロゴを入れをさせていただいています。

 

 

あとは、放映権とかチケット収入とかから賄われています。ただ今後はスタッフも増やして行きたいですし、もっと頑張らないとなっていうところです。

ヨシノ自動車さんについてはこちら(外部リンクに飛びます)

 

じゃぁ、大場さんの今の使命はいかに資金を集めるかっていう部分なんですね

 

もう私が存在する意義はそこだけです。サッカー畑で生きてきたわけではなく、自分はずっとバスケをやってきたので。お金持って来れなかったら存在意義がないので、いらないんですよ。

 

1年間やってみて、どうですか。

 

最初の半年くらいは、本当にしんどくて。英語の勉強もせずに行ってるのに、交渉したりとか経理上の言い合いとかあるし、前任が短かったので、日本人はどうせすぐに帰るんだろっていうイメージがあったりして。もちろん本社からの重圧もありますし。スポンサーもなかなかとれなくて、「このまま存続をするのか、やめるのか」っていう話にまでいったこともありました。でも、何も結果出せずに終わるのがくやしくて、「やります!」って本社に言ったりしました。

 

それを1人でやってこられたんですもんね・・・。

 

そうなんですよ。しんどかったです。ただちょうどそのタイミングで稲留(インターン生)も入ってくれたりして、少しずつ変わってきたのを見て、本社も「皆頑張っているからもうちょっとやらせてみようか」って見守ってくれるようになって。稲留が永住するって言ってくれているので、今後、自分は日本拠点にしてスポンサー営業をしてチームを潤すのと、講演したりして、チームと個人のブランディングに集中していこうかなって思っています。

 

大場由太としても名前を売っていこうっていうことですね!

 

そういうことです。営業とあと個人としてのイベントや講演が5本くらいあります。あとはSOLTILOのイベントを大阪と東京で企画中です。

 

大場さん登壇イベント!【12月14日新宿】

ありがとうございました!年明けまで約3ヶ月ほど日本に滞在される大場さん

12/14(土)の新宿でのイベントに登壇されます!

 

平成生まれの男3人でAFRICAキャリアを語る会
大場由太(SOLTILO UGANDA代表)× 原貫太(フリーランス国際協力師)× 森下仁道(元ザンビアプロサッカー選手)
アフリカをフィールドにする20代の男3人が集まって、アフリカ/それぞれの活動/大切にしている価値観/将来について、3時間語り尽くす会です。台本なし、情熱ありの3人のトーク会をお楽しみあれ!!
お申し込みはこちら→https://soltilo-uganda-event-1214.peatix.com/

 

大場 由太(おおば ゆうた)
SOLTILO UGANDA Ltd.代表 / SOLTILO Bright Stars FC ゼネラルマネージャー
【SNSアカウント】
◆個人
Twitter:https://twitter.com/OhbaYuta
Facebook: https://web.facebook.com/profile.php?id=100006654423779

◆SOLTILO Bright Stars FC
Twitter: https://twitter.com/soltilo_uganda
Instagram: https://www.instagram.com/brightstarsug/

 

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