理学療法士がアフリカへ③マラウイの医療現場で感じた理想と現実

Monire!(マラウイ北部の言葉で「こんにちは」)

 

こんにちは、カワカミアヤです!

 

前回はマラウイの食についてご紹介しました。

 

今回は理学療法士から見たマラウイの医療現場の”gap“というテーマで、マラウイの医療事情とわたしが理学療法士として感じるgapについて書きます。

 

理学療法士としての活動 

わたしは理学療法士としてマラウイの病院で活動しています。

 

理学療法とは、簡単に説明するとスポーツ外傷、脳卒中、骨折後など体に障害のある人に対して動きの回復を図るために治療を行うことを言います。

 

日本では病院で働いているイメージが強いと思いますが、高齢者施設やスポーツ現場、一般企業など働く場所は徐々に幅広くなっています。

 

現在わたしは主に理学療法の知識・技術指導、理学療法科の運営管理改善を目的として活動を行なっています。

マラウイの公立医療施設

マラウイでの勤務先

わたしが活動しているのは、マラウイの公立中央病院

 

マラウイ国内に4つしかない大きな病院です。

公立の医療施設にも種類があり、小さい順で、ヘルスセンター県病院中央病院があります。

 

ヘルスセンターは規模が小さいですが、村の中に位置していることが多く住民にとって1番近い存在。

それに対して中央病院はとても大きな病院で、主に周辺地域の病院・ヘルスセンターからの重症患者の受け入れを行なっています。

 

わたしは規模が一番大きい中央病院の理学療法科で、理学療法士として活動しています!

ヘルスセンターや県病院、中央病院の違いは?

 

ヘルスセンター、県病院、中央病院の3つでは、人員配置施設設備に違いがあります。

 

人員配置について

マラウイでは患者数に対する医師の数が不足しており、大きな中央病院では必ず医師が常駐していますが、県病院では医師が常駐しているところは少なく、ヘルスセンターに至っては医師がいません

実際には日本にない職種の、Clinical Officer Assistantという人たちが診断・治療を行なっています。

 

施設設備について

中央病院ではレントゲンを始め各種検査機器や治療器具が揃っていますが、県病院やヘルスセンターでは設備が不足しており、また、設備があったとしても日常的に起こる停電で実際には使えないことが多々あります。

 

このように、公立の医療施設でも各々で受けられる検査や治療には差があります。

 

マラウイの私立医療施設

また、マラウイには外国人医師が行なっている私立病院もあります。

病院によって規模はまちまちですが、どこも最低限の機器は常に揃っており、また技術レベルに関しても安定した治療が受けられます。

 

 マラウイの医療費はタダ!そのメリット・デメリット

 

マラウイの医療費…。いったいいくらくらいするんでしょうか?

 

答えはタダ!

 

診察代、治療代、薬代…全てが無料です。

もちろんこれは公立病院の話で、私立病院ではお金を払わなくてはなりません。

無料診療のメリット

これはやはり無料で医療が受けられるところ。

 

世界最貧国の1つと言われるマラウイでは、もし診療を有料化したら体調が悪くても病院に行けない、という人が必ず出て来ます。

誰でも医療を受けられる機会があるのはとても良いことですね。

 

無料診療のデメリット

ですが、無料診療だからこそ悪い点も。

それは、病気を“予防する”という考えが浸透していないこと。

 

「どうせ病気にかかっても診察も治療も薬も無料だし。」

という風に、病気は“予防する”ものではなくただ“治す”ものという考えが濃い気がします。

 

特に最近は糖尿病や高血圧など生活習慣病が急増しているマラウイ。

「治そう」と思った時にはすでにもう治らない病気を持っていることもあります。

理学療法士から見た、理想と現実の“gap

医療現場のGAP

全ての医療費が無料で、一見全ての人が平等に医療を受けられるかのように見えるマラウイ。

実際にマラウイで生活してみてわかったのが、平等とは言えないマラウイの医療事情です

 

裕福な人は有料の私立病院など、自分に必要な病院に行き、いつでもすぐに診察を受けられます。
必要な薬は、薬局ですぐに手に入れられます。

 

裕福でない人は人のごったがえした公立病院で何時間も診察を待つ上に、「今日の診察時間は終了」と言われ診てもらえないことさえあります
「病院に薬がない」と言われれば買うことも出来ず、生きるために必要な薬をも得られません。大きな病院に行くまでの交通費を捻出できず必要な医療を受けることさえ叶わないこともあります

 

理学療法士が必要とされているけれど・・・

理学療法士としてマラウイを見ると、理学療法を必要としている人は沢山います。

 

生活習慣病が原因で脳卒中になり体を思うように動かせない人、骨折後の人、歩けるはずの年齢に達しているのに歩けないこども。

 

しかし理学療法士の数は圧倒的に足りておらず、中央病院にしか配置されていません。

 

理学療法を受けるために中央病院に通おうと思っても、村からではその交通費を捻出できず通えない人は本当に沢山います。

 

また、こどもの理学療法の外来には1時間以上こどもを担いでやってくるお母さんたちがいるのですが、中には子供が大きくなると担ぐことが出来なくなり外来に来ることをやめてしまう人もいます

 

他国からの援助を受けながら医療についても徐々に発展しているマラウイですが、大都市にある大病院が発展していく一方で、そこから取り残されている村人たちがいます。

 

医療のみならずこれからますます色々なことが発展していくマラウイですが、その一方で格差もまた大きくなっていく可能性があります。

 

皆さんに届けたいこと

 よく、“アフリカ”と聞くと大草原にいるゾウをイメージする人や、有名なマサイ族などの姿をイメージする人が多いと思います。

 

お店なんてあるの?なんて思う人もいるかもしれませんが、中には南アフリカ共和国のようにビルが立ち並んでいる国もあります。

 

“アフリカ”と一言に括れないくらい、その国々には違いがあります。

また、国の中でも首都と地方では大きく違います。

 

どうか、その国・その地域のことを一言で括らずにその格差についても知ってみて下さい。

 必要な人に必要な医療を届け、この格差がなくなりますように。

 

ぜひ皆さんにこのことを知っていてもらいたいです。

 

ご覧いただきありがとうございました。

 

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