ウガンダでプロサッカーチームを経営する日本人がいる。
サッカー元日本代表・本田圭佑選手がオーナーを務める「SOLTILO Bright Stars FC」のゼネラルマネージャー大場由太だ。
現在27歳である彼の人生に、サッカーという文字は何一つなかった。
生き方を自由に選択できる国に生まれ、そして後押ししてくれる家で育った1人の人間として、これまでもこれからも、自分がワクワクする人生を歩んでいきたい。
この想いを胸に、選択の岐路で「楽しそうだ」と思った方を選んできた結果として今がある。
そしてウガンダでの挑戦が2年目を迎える今、頼もしいパートナーがいる。
”人生をかけてウガンダサッカーの発展に携わっていきたい”
大学を辞めて、ウガンダへの永住を決意したインターン生、稲留亜佑美(いなどめ あゆみ)。
それぞれの人生が交わった時、小さくとも着実に何かが動き出した。
2人が変えたい「ウガンダサッカーの現状」とは。
東京アフリカコレクション副代表にしてALL ABOUT AFRICA管理人の稲川雅也が、インタビューを敢行!
この記事の目次
人生はRPG。迷ったら面白いかどうか
大場さん自身はずっとバスケットボールに関わってこられてたんですよね?モンゴルに協力隊として派遣されていた時も、バスケの指導員だった。スポーツという共通項はあるとしても、「アフリカプロサッカークラブの運営」という畑違いのところによく飛び込みましたよね。アフリカ何十年も経験していて手がけるような仕事だと話を聞いていて思ったんですが。そのあたりのチャレンジ力ってどこから来るんですか?
面白いか面白くないかだと思うんですよ。本当にそれだけで動いていて、「アフリカでサッカークラブのGMどう?」って知人からの紹介があったときに、そのキーワードに惹かれたというか、純粋に「面白い!」って思ったんですよね。自分が代表とはいえ、給料面でいうとよくないし、実際に飛び込んでみてどれだけ過酷かとか、ハードルの高いミッションかというのがわかったんですが、だからといって辞めようと思ったことはないですね。
記事に書いてくださっていた、まさにRPG思考なんですね!こう大変な中に面白さを見出すというか。
大場さんの記事はこちらからfa-calendar-check-o
本当にそれです。「楽しいな」っていう第一印象から入っているので、楽しめるかどうかは自分次第だと思ってますね。なので、初めてのアフリカだからどうとか、モンゴルで活動してたのに違う国とか、そういう思考はないですね。
キャリアの部分でも面白いですよね。新卒で協力隊入られたんですよね?で帰国後しばらくはJICAの仕事をされていて、生きていく上での指針とかはあるんですか?
いや何もないですね。結局のところ「楽しいそうかどうか」だけで、もともと高専で就職率も高い学校の、しかもIT学んでいたのでIT関連企業の就職は選択肢にはありました。大学に編入して、大企業を目指すとかも考えたりもしたのですが、「なんかつまらないな」っておもって。じゃあ、あえて全く違うことをやってみよう、と思ったのが始まりですね。
協力隊にはなんで参加したんですか?
高校3年生でヒッチハイクして全国回ってるときに東北大震災がおこって、ボランティアに行きました。そしたらシニアボランティア経験のあった学校の先生から、ボランティア興味あるのならJICAどう?って、声かけられて。
それで興味をもって調べたら、バスケの指導っていう職種があるということで。指導歴が2年以上必要とのことだったんですが、実は15歳くらいからバスケの指導はやってきていたのでその時点ですでに4年近い実務経験がありまして。じゃぁ、出来るなって思って。TOEICもそこまで高い点数ではなかったのでいけるかなって。
新卒でわざわざ高専も出たのに、新卒でバスケのボランティアって、年上の日本で働いている面白そうな人達に「おまえ面白いな」っていってもらえるかなって。メタ認知的な。笑
自分の人生ゲームをプレイしている感じですね、まさに。その傾向は昔からあったんですか?
そうですね、うちの両親が、もうリタイヤしているんですけどキャンピングカー買って200日くらい旅しているような人達で。
JICAの仕事で日本にいたときも、「日本で働くなよ、もっと面白いことやれよ、なんならアフリカくらい行ってこい」って言ってくるんですよ。で、たまたまなんですが、その2ヶ月後くらいにウガンダ行くことが決まって、だから親に止められることはないし、むしろ「変わったことをやり続けなさい」って言われて育ってきたんですよ。
なかなかいないですよね、そんなご両親。うちはもうずっと怒られてるよ、この生き方(笑)
逆にいうと、どっかに定住しようとするとすぐにディスられるんですよ。笑
(笑)。ご兄弟は他にいらっしゃるんですか?
姉が1人います。国家公務員しててこないだハワイで挙式をした、めちゃくちゃちゃんとしている姉が。うちの親に言わせれば「あいつはつまらん人生生きとる」くらいな(笑)
うおぉぉ。それは、それでめちゃくちゃしんどい!お姉さん大変ですね・・・。笑
なんでまぁ、結果的に面白い人生にはなってるんですが、実際にアフリカに来てみると、変わってる日本の先輩がゴロゴロいたりして。もっと自分も出来ることとか、挑戦できることあるなってまた新しい刺激を貰っています。
大学辞めてウガンダ永住したいんです!
そして今日はもう1人来て頂いています。社員は大場さんだけとのことですが、インターン生がいらっしゃるんですよね。自己紹介をお願いします。
稲留亜佑美(いなどめ あゆみ)です。大学4年時を休学中で、あしながの留学制度を使ってウガンダにいきました。そこでご縁あって大場さんのところでインターンをしています。休学中ではあるのですが、ウガンダに永住したいと思っています。
ここで、人生をかけてウガンダサッカーの発展に携わっていきたいです。なので、実は退学届を出すために、日本に帰ってきました。
おぉ・・・それはもう完全にうちの稲川もそうですけど、アフリカに人生変えられていますね!
確かに私もアフリカと出会って大学辞めた人間です。稲留さんはどういう経緯でインターンをすることになったんですか?
ウガンダに行ったのはあしながの制度に自己研修があってそれでいったんですよ。そしたら、ウガンダ滞在中に、SNS通じて本社の二村さんから、突然「ウガンダサッカー興味ない?」って、メッセージが来たんですよ。SNSのすごさを実感した瞬間でもありました。
私も機会に恵まれない子ども達にスポーツを通して貢献したいって気持ちがあってウガンダに来ていて、しかもそれを大好きなサッカーで出来るって、まさに私のやりたいこととマッチしてる!と思って。で、「是非お願いします!」と返信したのがきっかけです。
元々サッカー好きなんですね!プレイヤーだったんですか?
いえ、私は観戦専門です。小学校の低学年の時から、おじさん達に混じりながらゴール裏でずっと声援を送ってきました。セレッソ大阪が大好きです!
大学の時も大学サッカーの運営に携わったり、サッカー部のマネージャをやっていたり、あしながの関西エリアの代表をしていたこともあって、アフリカ支援やサッカーのことをSNSで発信していたので、それを二村さんが見つけてくださって。
もう一人、池本っていう現地で今も頑張ってくれているインターン生がいるんですが。その彼と会うタイミングで、稲留さんも呼んで貰えませんかってお願いして会ったのが8ヶ月前で。
で、そのまま入ることになって?
で、大学辞めることになって。永住することになって。
人生マジで何が起こるかわからないですね。
大学辞めなくてもいいんじゃないですか?私がいうことでは一番ないけど(笑)いまもう4年生でしょ?
いやもう、その1年待つのがなって。今すぐ行きたいなって思って。1年間学費払って学べるものと、大卒っていうカードがアフリカで今後活きていくのか、というのを秤にかけた時に、もう今行動しよう!と。
もちろん色々と悩んだ末のことではあるのでしょうが。
じゃぁ今はインターンということですが、今後移住するには、社員として?
いまカツカツの状態でやっているので、彼女をいれるメリットをきちんとクラブに提示していかないといけない。あくまでも例えばですが、選手ひとりの契約を切っても、彼女をいれるメリットがあるのか。選手がクラブにとっては一番の資本なので。なんとしてもスポンサーを取って、彼女に入って欲しいなって思ってて。だから今も、一時帰国のタイミングで一緒に営業活動まわったりしています。
相性抜群!ウガンダでの2人のチームワーク
ウガンダの印象というか、暮らしていてどうですか?
会社の代表として来ていて、やることも膨大なので、私生活を楽しむ余裕も時間も本当になくて、なのでもし好きかと聞かれたらわからないですね。騙されることもあるし、クラブ内でイラッとするようなこともありますしね。ウガンダのこともしかしたら嫌いかもしれない。生活レベルでいうと、人が優しいし陽気だから好きだなって思うことはありますよ。ただやっぱりビジネスとしての付き合いは難しさやハードルを感じることは多々あります。
ビジネスされている方はそうおっしゃる方が多いですね。稲留さんはどうですか?
ウガンダというか、海外がウガンダしか知らないんですよ。初海外初アフリカで。だからこれがウガンダとして魅力なのか、アフリカとしての魅力なのかはわからないですけど、やっぱり人は素晴らしいですね。貧困で困ってるっていうイメージはそのとおりではあるんですが、周りにいる人達がお金を目的にしていないなって感じることが多くて。
日本だとご飯行くとか、連絡するときとかって基本的には用事あったり、自分的に必要がないと連絡取ったりしないんですけど、ウガンダだと用事なくても気軽に誘い合ったり、連絡頻繁にきたりとか、そういうとこすごい好きですね。
ウガンダで、日本人と集団生活することがあってそこで悩むこととかがあったんですけど、その時に助けてくれたのがウガンダ人でした。「気にしなくていいよ。自分のことをもっと考えればいい」って言ってくれて。心を支えてくれたのがウガンダ人でした。
大場:心を支えてくれたのがウガンダ人・・・。ほんと愛があるなぁ!
稲留:正直、何回も裏切られていることもありますけど、それでもやっぱり好きですね、ウガンダ。
自分は今27歳ですけどクラブのトップにいるわけで。で、クラブのダイレクターとかは40代とか50代が多いし、見た目的にも若くみられるしこんなガキに何が出来るんだって思われる。だから、意識して厳しくしてきた部分はある。選手にも「ボス」と言われるように威厳をあえて出そうとしているっていうのはありますね。あえて自ら馴れ合いにはいかないというか。その点、稲留はどんどん内部に入り込んでいって、良い関係を作って調和してくれている。だから僕は上から俯瞰出来る。
良いペアですね!
大場:だと思ってます。ね!思ってるよね!
稲留:はい!思ってます。
なんだこの可愛いやりとりは。笑
ウガンダサッカーの現実
ウガンダ人のサッカー熱ってどうですか
すごいですね。サッカーは好きです。でもウガンダサッカーは好きじゃない人が多い。プレミアリーグが一番好きだと言われるんですよね。レベルがウガンダリーグとは違いますし・・・。アフリカ全体的に、賄賂絡んだ試合っていうのがあるんです。たぶん、そうだったんだろうなって思うような判定を受ける試合もあって。
あからさまにゴールネット揺れてるのに、ノーゴールって言われたり。「え、ゴールの定義ってなに!?」みたいなね。ビデオ判定も依頼して何度抗議してもダメで。最終的には相手のサポーターにも、あれはないよって言われるような始末で。
だから、最初から勝敗決まっているような試合みたってつまらないってウガンダ人に思われているのが、ウガンダサッカーの現状です。タクシーとかバーで好きなチームはって聞いても、アーセナルとか、マンチェスターユナイテッドばかりで、一度もウガンダのサッカーチーム名はあがったことがないですね。
試合の放映は毎回されるんですか?
人気の高いチームだったりとか、メディア系がスポンサーのところだけが放映されています。なので、そのチームと試合の時は我々も映してもらえる、みたいな状況ですね。
資金が潤沢なクラブってあるんですか
ありますね、冒頭でもお話したように政府関係が運営をしているクラブがいくつもあります。一番は、東京都庁フットボールクラブみたいなのがあるんですよ。カンパラの政府系が持っているクラブで。資金面では全然話が違いますね。で、そことの試合の時に先ほどのあからさまに怪しい判定があったので、色々と勘ぐってしまうというか・・・。
ただ、稲留の強みとして、ずっとサポーターとしてサッカーに関わってきているので、ファンがどうやったらサッカー好きにさせられるかっていうのを考えてくれるんですよね。
そうなんです。もっとスタジアムに足を運んで欲しいので、グッズを作るとかそういうことを取り組んでいきたいなって思っています。1人でもウガンダサッカーが好きな、ウガンダ人を増やしていきたいです。
大場さん登壇イベント!【12月14日新宿】
ありがとうございました!サッカーに一切関わってこなかった大場さんと、サッカーに関わり続けてきた稲留さん。2人のバランスの良さは、掛け合いの端々から感じました。きっと来年から、もっともっと大きくなっていきそうな期待でいっぱいです!
年明けまで約3ヶ月ほど日本に滞在される大場さん
12/14(土)の新宿でのイベントに登壇されます!
アフリカをフィールドにする20代の男3人が集まって、アフリカ/それぞれの活動/大切にしている価値観/将来について、3時間語り尽くす会です。台本なし、情熱ありの3人のトーク会をお楽しみあれ!!
大場 由太(おおば ゆうた)
SOLTILO UGANDA Ltd.代表 / SOLTILO Bright Stars FC ゼネラルマネージャー
【SNSアカウント】
◆個人
Twitter:https://twitter.com/OhbaYuta
Facebook: https://web.facebook.com/profile.php?id=100006654423779
◆SOLTILO Bright Stars FC
Twitter: https://twitter.com/soltilo_uganda
Instagram: https://www.instagram.com/brightstarsug/
対談記事は全部で3つ!
彼に与えられたミッション、チームとしての夢、そして背負うウガンダサッカーの未来。
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